声明

渋谷区美竹公園・神宮通公園からの野宿者排除に対する抗議声明

渋谷区長 長谷部 健 殿                           
2022年12月19日

渋谷区美竹公園・神宮通公園からの野宿者排除に対する抗議声明

 私たち、SWASH(セックスワーカーの支援団体)、Transgender Japan(トランスジェンダーの人権擁護団体)、BROKEN RAINBOW-japan(LGBTIQA+に対する性暴力問題に取り組む団体)は2022年10月25日に渋谷区が行なった再開発事業に伴う美竹公園の封鎖、及び公園で寝泊まりする野宿者の強制排除、並びに12月14日朝以降の美竹公園強制封鎖、神宮通公園に移動した野宿者の所持品の収奪に抗議します。
 
10月25日早朝、渋谷区は抜き打ちで美竹公園で寝泊まりする人々から公園の水道やトイレの使用を奪いました。再開発事業に関する説明やシェルターへの案内もあったようですが、強制排除に関する説明や十分な合意形成もないまま実施されており、このようなやり方はとても福祉的な対応とは言えません。いわゆる「ハウジングファースト」事業の利用を促したい区の立場はあるでしょうが、それを強いる方向に動くのではなく、なぜなかなか利用されないのか、利用する可能性がある側の意見の聞き取りや分析にこそ取り組むべきです。公園の一部出入り口が解放され、トイレが使用可能になったのは真夜中になってからでした。当日の夜は、強風で気温が低く雨も降っていたので、強制排除された人々は寒く辛い時間を長く過ごすことになりました。
 
渋谷区の行為に対して全国各地から抗議の声が殺到し、排除の動きは一旦収まったかのように見えました。ところが、12月14日朝、渋谷区は美竹公園の強制封鎖に踏み切り、野宿者は生活拠点を近くの神宮通公園に移すことを余儀なくされました。そして、その神宮通公園にも同日夕方に区職員と警備員100名程度が押し寄せ、テントや寝袋、財布、衣類、身分証明書など総ての所持品が収奪されました。中には売り物となるはずの雑誌「BIG ISSUE」を奪われた人もいます。区の土木部公園課長はハンドマイク越しに、今年5月に会社役員の地位にある者が野宿者の寝袋に放火した事件を持ち出し、野宿者が公園にいることの危険性を説きました。まるで野宿者がいるから放火事件があったと言わんばかりの論法であり、言語道断です。冷え込みが厳しさを増す中、野宿者は幾度目かの行政による非人間的取り扱いに傷つき、強制排除の不安を抱えながらの生活を強いられています。
 
そして、明日20日も強制排除が行われるのではないかという情報が流れています。渋谷区に対して、これ以上のいかなる野宿者排除も行わないこと、野宿者ならびにその連帯者たちの声に真摯に応え、区の福祉のあり方を抜本的に改善することを強く要請します。
 
以下では、なぜ私たちの立場から抗議の声をあげているのかについて説明します。

 セックスワーカーやLGBTIQA+に対する差別、暴力はあらゆる社会に存在しています。日本も例外ではなく、セックスワーカーやLGBTIQA+は、様々な場所で社会的排除を受けるため、住居や収入面で困窮し孤立しやすい脆弱な存在です。野宿者の人々が置かれている状況は決して縁遠いものでも、他人事でもありません。
 
 また、私たちは渋谷区代々木公園で開催されている東京レインボープライド(以下、TRP)に個人としても団体としても参加し、時にはパレード時のフロートを担当するなどして盛り上げてきました。TRPはいまや地域と共にある日本国内最大級のLGBTIQA+イベントであり、このようなイベントに勇気づけられて私たちは今日まで生き延びることができています。だからこそ、“インクルージョン&ダイバーシティ”を掲げて長年TRPを後援してきた渋谷区が、他方では野宿者に対して、その声を聴いたり応えたりせず、排除という暴力を振るっている現状を黙って見過ごすわけにはいきません。
 

 加えて、東京トランスマーチがメイン会場として使用している新宿中央公園は新宿区の野宿者のみなさんの生活支援拠点となっている場所です。東京都は1996年に野宿者を排除するために都庁に通じる新宿駅西口地下通路に「動く歩道」を設置しました。それを受けて新宿駅近くの地下広場につくられた「新宿ダンボール村」は不幸なことに火災に遭い、解散することになりました。その時に野宿者とその連帯者たちが次に選んだ生活の支援拠点こそが新宿中央公園です。以降20年以上にわたってこの場所周辺は生活の拠点として維持されてきました。
 

 ある者は野宿者として、ある者はLGBTIQA+として、ある者はセックスワーカーとして、この場所に生き、また、差別と暴力に対して抗議の声をあげ、人権を獲得しようとしています。野宿者の人々を排除することは暴力であり、その暴力に対しては野宿者に連帯する者たちとして徹底的に抗議します。あわせて、野宿者と真摯に向き合い、その声に応える福祉の充実を求めます。暴力の加害主体となっている渋谷区にインクルージョンやダイバーシティを掲げる資格はありません。
 野宿者はすでにこの社会に生きており、これからも共に生きていく仲間です。

SWASH
TransgenderJapan

BROKEN RAINBOW-japan

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