声明

ジェンダー平等の後退を招く英国最高裁判所判決への抗議声明

4月16日、英国最高裁判所は2010年に英国で成立した”平等法”(以下、平等法2010)において、保護されるべき特性として規定された「女性」の定義からトランス女性を除外するという判決を下しました。TransgenderJapanはこの判決に強く抗議します。

平等法2010はその第2部1章で“差別から保護されなければならない特性”(PROTECTED CHARACTERISTICS)を9つ定義しています。その第3項目はgender reassignment(社会的性役割の再割り当て)、第8項目はsexであり、ぞれぞれトランス差別と性差別を想定しています。今回の判決は第8項目に基づく文脈での「女性」にトランス女性は含まれないとしたものです。この判決はジェンダー差別の存在を完全に見落としています。例えば「女性差別」における「女性」とはたいていの場合、生物学的性別(sex)ではなく社会的性役割(gender)を意味します。

トランスジェンダー当事者にとっては、トランスジェンダーであることを理由とする差別からは保護されても、トランス“女性”として、トランス“男性”として、ノンバイナリーとして生きることを阻む差別からは保護されないということになります。シスジェンダーにとっても、社会的性役割(gender)を理由とする差別から保護されないとなれば、主体的な個人としての人生を全うすることは難しくなります。この度の英国最高裁判決が、本来関連づけて解釈すべき上記第3項目と第8項目を分離させることで、平等法2010全体の意義を弱体化することを懸念します。

それでもなお、平等法2010が規定するPROTECTED CHARACTERISTICSには「性別の再割り当て」(gender reassignment)も明確に定義されていることと、この判決がトランスジェンダーを保護対象から除外する内容ではないということは、明確にしておきたいと思います。For Women Scotland(FWS)をはじめとする世界中のトランス差別団体がこの判決をトランスジェンダー排除に対する司法のお墨付きとして恣意的に用いていますが、これは判決の誤用であり、悪用です。

間違った判決は必ず覆される時が来ます。スコティッシュトランスの”not to panic”の呼びかけに応え、冷静に闘いましょう。TransgenderJapanはUKに暮らすすべてのトランスジェンダーに連帯します。

おすすめ