お知らせ 報告

千葉県の人権部局へ要請に行ってきました

私ども一般社団法人TransgenderJapanは本日、「令和6年度千葉県人権啓発指導者養成講座」(以下、人権講座)において森奈津子氏が講師に選定されている件について、担当部局である千葉県健康福祉部健康福祉政策課人権室(以下、人権室)に要望書を手渡し、副課長から人権室が把握している限りの事態の概要と対応状況について説明を受けました。現在人権室は、その前文等で「性的指向及び性自認」を尊重されるべき多様性として明記している「千葉県多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成の推進に関する条例」との整合性を含めて熊谷俊人千葉県知事からも説明を求められており、森氏を講師として選定した経過の詳細を調査中とのことでした。

人権講座を外部委託した団体による講師選定であるが故に経過調査は難航していますが、誠実な対応を試みている人権室のみなさまの姿勢に敬意を表します。合わせて、要請の機会を設定してくださった市民ネットワーク千葉県の川口えみ県議には深く感謝を申し上げます。

以下、要請文全文です。


2024年9月24日

千葉県健康福祉部健康福祉政策課人権室 ご担当者様

一般社団法人TransgenderJapan
代表 畑野とまと

【要請】人権啓発指導者養成講座「女性に関する人権」について

 平素より、大変お世話になっております。私どもTransgenderJapanはジェンダー平等をめざす究極的な社会的公正の構築を理想に掲げ、日本においてすべてのトランスジェンダーが安心でき、また、お互いをサポートできる環境をつくることを使命に活動する一般社団法人です。
 令和6年度千葉県人権啓発指導者養成講座(以下、人権講座)のうち、2024年10月2日(水)に開催される「女性に関する人権」をテーマとする回では、森奈津子氏を講師に「女性スペースを守る活動とは」という演題が設定されています。弊団体はLGBTQ+、とりわけトランスジェンダーに対する差別言説が
女性の人権に擬態して人権講座を通じて流布されることを危惧します。

 千葉県のホームページで公開されている当該講座概要には「トランスジェンダリズム」や「LGBT思想」なる単語が登場しています。まず、前者はトランスジェンダーが精神疾患とされていた時代の疾病名(接尾語”-ism”には「病的な状態」を表す意味があります)であり「トランスジェンダー主義」のような訳し方、用い方は誤用です。また、「LGBT思想」はLGBTQ+の存在が可視化されるにつれ、2010年代後半以降に出現した単語です。存在であるはずのLGBTQ+を危険思想(カルト)と位置付け、権利保障を阻害する意図があります。さらに言えば、「LGBT思想を広げようとしているのが米国民主党であり、それに対抗する救世主がトランプだ」「共産主義国が西側諸国の人口減少を狙ってLGBT思想を流布している」など陰謀論の一角を成す単語です。誤用や陰謀論を用いて組み立てられているのが森奈津子氏が訴える「女性スペース」問題なのであり、その実態はトランスジェンダーを性犯罪者予備軍として描く差別言説です。これら差別言説の流布に主導的な役割を果たしているとみられる団体に「女性スペースを守る
会」があり、その発行物はトランスジェンダーに対する悪意を含むものであると裁判所も認めていますが、森氏はその団体と協力関係にある人物です。

 また森氏は、一方で「女性スペース」問題を女性の権利の問題として訴えながら、他方で家に居場所がなく路上に暮らす少女たちを支援する活動を「利権」「公金チューチュー」と貶めて描く書籍を出版するなど、女性の権利と認識する射程範囲が著しく歪かつ狭いです。

 これら差別的な言説の発信を以って森氏自身は「LGBT活動家と闘う」こととしているようであり、それ故に女性の人権の回復ではなく、LGBTQ+を罵ることが言論活動の行動規範となっています。このような行動規範、並びにこれに基づいてデマや陰謀論の拡散さえ厭わない言論活動はその前文等で「性的指向及び性自認」を尊重されるべき多様性として明記している「千葉県多様性が尊重され誰もが活躍できる社会の形成の推進に関する条例」の基本理念にも反しており、人権講座の講師として不適切です。

以上の理由から、以下3点を要請します。

1.森奈津子氏を令和6年度千葉県人権啓発指導者養成講座の講師から解任してください。

2.再発防止に向けて、森奈津子氏を講師に選択し、テーマ及び演題を設定した経過を整理し、公表してください。

3.「女性に関する人権」が重要なテーマであることは事実です。今日、日本に暮らす女性が直面する人権問題について精査し、その解消のために適切な講師を選定してください。

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