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GID特例法が定めるいわゆる「手術要件」についての最高裁大法廷憲法判断を受けて

 本日、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、GID特例法)の第3条1項四号「生殖不能要件」及び五号「外観要件」に規定されているいわゆる「手術要件」について、最高裁判所大法廷(以下、大法廷)の憲法判断が出されました。大法廷は裁判官15名の全員一致で「生殖不能要件」は日本国憲法13条〈幸福追求権〉に違反し無効であるとの判断を示し、これを合憲とした2019年1月23日の最高裁第2小法廷の決定は変更されました。TransgenderJapanはトランスジェンダーの権利回復を大きく後押しするこの判断を歓迎します。

 大法廷が「外観要件」についての憲法判断を避け、高裁に審理を差し戻した点は確かに課題として残っています。「外観要件」が引き続き有効である限り、手術なしで性別変更をする選択肢が閉ざされたままのトランスジェンダーが存在します。「外観要件」は文字通り見た目に関する要件です。見た目について、法律で変容を強いられることは適当ではないと考えます。大法廷では裁判官3名が「外観要件も違憲だ」とする補足意見を述べるなど、真摯な検討が行われたことがうかがえます。今後、高裁で改めて審理が尽くされ、「生殖不能要件」と同じく違憲の認定がなされること、そして、原告の性別変更が認められることを期待します。

 
 連続するこれらの憲法判断によって、日本に暮らすトランスジェンダーは生き方の幅が大きく広がりうる状況になりました。司法には「外観要件」の違憲認定を、立法には両憲法判断に応えてGID特例法に代わる手術に依らない性別変更手続きの制度を整備し、トランスジェンダーの多様な生き方の保障に取り組むことを求めます。

 大法廷は「特例法の制定当時に考慮されていた本件規定による制約の必要性は、その前提となる諸事情の変化により低減している」と明記しています。このような社会の変化の原動力はトランスジェンダー1人ひとりの存在、LGBTQ+やアライのみなさんの存在です。現在、トランスジェンダーに対するバックラッシュが苛烈になっています。大法廷の憲法判断を受け、トランスジェンダーという属性と犯罪を結びつける言説やあたかも自由自在に戸籍上の性別を変更できるかのようなデマが流布されることは想像に難くありません。そのような困難に抵抗しながら、でも確かに社会を変えてきた/いるということを確認しながら、人権回復を進めてまいりましょう。

 最後に、静岡家裁、そして最高裁大法廷と画期的な憲法判断が連続して示されたのは、司法に「手術要件」の違憲性を訴えた原告の方がいらっしゃったからです。心からの敬意を表します。

2023年10月25日
TransgenderJapan

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