去る10月29日、作家・李琴峰さんの法令上の性別変更歴を本人の意思に反して公表した行為について、東京地裁はプライバシー侵害を認定し村松裕美甲府市議に110万円の損害賠償を命じる判決を言い渡しました。TGJPはプライバシー権とアウティング行為の重大性について真摯に検討した東京地裁判決を支持します。
その後、今月5日に村松市議はこの判決を不服として控訴しました。私たちは、控訴という手続そのものを否定するものではありません。司法判断を争う権利はすべての市民に保障されています。しかし、本件判決が認定したのは、個人の極めてセンシティブな情報を本人の同意なく暴露し、人権を侵害したという事実です。村松市議はその重大な判断に向き合うことなく、記者会見の場で「出生時の性別を知る女性の利益」などと詭弁を展開しました。この主張の背景には、トランスジェンダーという属性を潜在的な犯罪リスクと結び付ける考え方があります。そして、そのような考え方を差別的な言説として批判することには公益性があると、別の裁判でも認定されています。本件で裁判所が判断した人権侵害の問題から意図的に論点を逸らしていることからも、村松市議が判決の趣旨を真摯に受け止めているとは到底言えません。
また、村松市議は産経新聞のインタビューで「レズビアンとして活動する際に、出生時の性別まで秘匿すべき情報になるのは間違っている」という発言をしています。レズビアンは法令上の性別変更歴の有無が公開されるべきという考え方はレズビアン当事者のみならず、レズビアンが含まれる”女性コミュニティ”を構成するすべての人にとってプライバシー権を侵害しうる脅威です。
以上の理由から、TGJPは村松市議の反省なき控訴に対して抗議するとともに、公人たる市議会議員として真摯な姿勢で人権と向き合うよう求めます。合わせて、産経新聞の報道姿勢についても深刻な懸念を表明します。記事は控訴した村松市議の主張を詳しく伝える一方で、判決が認定した人権侵害の内容や、アウティングによって当事者が受ける深刻な被害について十分に掘り下げていません。その結果、本件を単なる意見対立や思想的論争のように描き、人権侵害の本質を見えにくくしています。
私たちは、いかなる理由によっても人権侵害や差別が正当化されることを認めません。また、報道機関には差別や偏見を助長することのない、公正な報道を強く求めます。
2026年11月7日
一般社団法人TrasngenderJapan

